整備費が問題となっている新国立競技場。ザハのデザインが特殊
と言われているが、オリンピックのメイン施設としてはむしろ正統
なデザインではないかと思う。というのは、前回東京オリンピック
の国立代々木競技場=丹下さんの代表作ともいえる名建築、これは
吊構造の屋根の数学曲線がつくる造形が例えばアリーナ内部の天井
に現れたりと、力学的な機能美が所要空間と見事に一体となってい
る、それを可能にしたのが近代の工業技術だった。今回、8万人収容
の大フィールド空間に開閉式の屋根を架けるという所要条件に対し、
ダイナミックかつ美しい空間を提示し得たのがザハ(のキールアーチ
構造)だった。構造と空間の織りなす造形、オリンピックメイン競技
場としての求心性に応え得る強度を持った建築として代々木に繋が
る系譜にあると思う。安藤さんの「ザハの建築を世界一の日本の
(現代)施工技術でぜひ実現する」は素直な気持ちだったであろう。
(コンペでザハと競ったSANAA案は雲を浮かべたような屋根を架け、
屋根とスタンドのエッジがつくりだす揺らいだ空間が魅力。これは
現代建築の表現テーマの流れに沿ったもので、ファサードの表層的な
処理で境界の曖昧さをつくる事例が多いが、これはフィールド空間で
それを表現しようとしたもの。この拡散的なベクトルは現代の社会/
空間の有様の表現であるが、オリンピック施設に求心性はもはや必要
ないのだという意図であればなかなかの批評性だ。それに対しザハ案
はストレートで王道的と言える)
コストの問題は然るべき判断をすれば良い。(`然るべきところ'が
存在しないのが問題だが、、)。コストを最優先課題とするのか、
コストが掛ってもやるのか、やるべきなのか、仕方なくやるのか、
コストを掛けるに足るものが出来るのか等々、、判断材料は山積みだ
が議論を尽くした方が良い。
私は当初、うやむやなままでもいいからザハの建築を見てみたいと
いう欲望もあったのだが、コンペ案の時には(まだ?)あったキールア
ーチの説得力が基本設計では無くなっていて、どうも構造的な意味合
いも薄れている様である。(それで単なるヘルメットにしか見えなくな
ったのか)。いかにも中途半端なものがいかにも中途半端な仕組みに
よって出来てしまうくらいなら白紙撤回とした方が良い。コンペ時の
予算要件から明らかに逸脱するのならば失格にすればよい。
そもそも今回の東京オリンピックのテーマは「コンパクト」ではなか
ったか。主要都市2巡目開催でかつての先進国は成熟国となり、経済
も右肩上がりの成長期からゆるやかな成長もしくは縮小に向かう中で
のオリンピックの意義、位置づけとして既存インフラが整備済みで十
分に利用可能である事が東京の強みではなかったのか。その中でメイ
ンスタジアムだけ無駄の象徴のように建てるというのは全くコンセプ
トに反している。
(実際、今、東京でオリンピックを開く意義というのが全くわからない
訳で、もっといえばオリンピックそのものの存在意義も薄れている、
下手をすればある種の利権構造でしかない。であればせめてコスト検
証だけはしっかりとしたい。今回はメインスタジアムという目に見え
て象徴的なものなので問題が表面化しているが、陰ではその他にも多
々あるのかと。開会式・閉会式の式典に向けて芸能プロデューサー達
のロビー活動も囁かれているが、例えば
AKBのお遊戯に何億円
使われるとか、きちんと情報公開されなければならない。)
ところで新国立競技場問題の代替案として、まず今のザハ案は白紙
撤回。ラグビーW杯やオリンピックに間に合わなくてもよいから予算
内で可能な案を選び直す。で、メインスタジアムは
東京湾にメガ
フロートを浮かべて仮設建築で建設する。オリンピックが
終わったら上物は撤去しメガフロート本体は船外機を付けるか曳航し
て沖縄まで移動。そこに米軍普天間基地を移転で一石二鳥。
(基地移転が難しければメタンハイドレート採掘のプラットホームとか)
追記:抜本見直しするようですね